「ネット弁慶を卒業」 松本容疑者、出頭前に書き込み・・・容疑者、家賃3万のアパートに住み知人や友人なしか

 福岡市中央区の起業支援施設で東京都江東区東雲(しののめ)2、インターネットセキュリティー会社社員、岡本顕一郎さん(41)が刺殺された事件で、岡本さんの体には正面だけでなく背後にも複数の傷があったことが福岡県警への取材で判明した。県警は、殺人などの容疑で25日に逮捕した福岡市東区筥松(はこまつ)1、無職、松本英光容疑者(42)が、逃げる岡本さんを執拗(しつよう)に追い回した上で殺害するなど強い殺意があったとみて調べる。

 「ネット弁慶卒業してきたぞ」

 旧大名小学校跡を活用した施設「フクオカグロースネクスト」で24日夜、IT関連のセミナー講師を務めた岡本さんが殺害された後、ネットの匿名の掲示板にこんな書き出しから始まる書き込みがアップされた。松本容疑者が交番に出頭したのはその約20分後だった。

 「ネット弁慶」とは、ネット上だけで強気な発言を繰り返す人物を指す。書き込みは「俺を『低能先生です』の一言でゲラゲラ笑いながら通報&封殺してきたお前らへの返答だ」などと続き、「これから近所の交番に自首し責任を取る」とも記載されていた。県警は、書き込みをしたのが松本容疑者の可能性があるとみて慎重に調べている。

 2人は面識がなかったようだが、ネット上では岡本さんのハンドルネームの「hagex」と、松本容疑者とみられる「先生」の接点が確認されていた。両者とやり取りをしたことがあるという40代男性によると、「先生」はネットで他者を「低能」「ゴミカス」などと中傷する「荒らし」を繰り返し、ネット上でこう呼ばれるようになった。

 逆にhagexは問題の書き込みがあるとサイト運営者に通報するなどしており、「先生」は不満を持っていたとみられる。男性は「『先生』が『殺したい』と宣言する対象は数人いた」と証言する。ただ「hagexさんの名前が出たことはなかった」と話す。【柿崎誠、宮原健太】

「恨み買う人でない」
 岡本さんは、雑誌の編集者などを経て、現在は東京都内のサイバーセキュリティーのコンサルタント会社に勤務。匿名化ソフトを使ってアクセスする「ダークウェブ」など最新のサイバー犯罪にも精通していた。編集者時代の知人男性は「仕事熱心で優しい人柄だった」と振り返り、別の知人は「明るく社交的で恨みを買うような人間ではない」と語った。

 一方、近隣住人によると、松本容疑者は家賃月約3万円の2DKのアパートで15年ほど前から1人暮らしをしていた。あいさつをしても返事はなく、友人や知人が訪ねてくるのを見たこともないという。【平塚雄太、石井尚】

https://mainichi.jp/articles/20180626/ddm/041/040/147000c