安倍首相の日朝交渉 基本方針を堅持しながら「トランプ流」も取り入れ

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 米朝首脳会談を受け、日本政府は拉致問題の解決を目指した日朝首脳会談を含む今後の北朝鮮との交渉に向け、準備に全力を傾注する。安倍晋三首相は米国とともに進めてきた「3つの基本方針」を堅持しながら、トランプ米大統領が取った「新しいアプローチ」も取り入れ、拉致問題の確実な解決につなげたい考えだ。

 「百パーセント、シンゾーを信頼しているから、一緒にやっていこう」

 トランプ氏は北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長との12日の首脳会談後、首相との電話会談でこう語りかけ、今後も対北朝鮮政策でタッグを組んでいくことを呼びかけた。

 日本の今後の行動を読み解くカギとなるのは、首相の18日の参院決算委員会での発言だ。

 「(北朝鮮と)信頼を醸成し、北朝鮮の核・ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題を解決した先に待っている未来図を描きつつ、その前提となる諸問題の解決に向け尽力していきたい」

 首相はこの発言の直前に「トランプ氏は相互信頼を醸成しながら非核化の先の明るい未来を共有し、相手の行動を促すという新しいアプローチを採用した」とも語り、トランプ氏の北朝鮮との向き合い方を取り入れることを示唆した。

 もっとも、日朝間の相互信頼の醸成は容易でない。拉致問題をはじめ、日本側に不信感は根強い。それは北朝鮮側にも共通する。今後、水面下での接触を重ねていくとみられるが、成否を見通すことは難しい。

 そこで日本としては、トランプ氏の強力な支援を背景に、米国がやったように、拉致問題などを解決した後の北朝鮮の姿を示していくとみられる。首相が「北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、明るい未来を行う用意がある。できる限りの役割を果たしていく考えだ」と繰り返す理由もここにある。

 日米首脳は(1)経済支援などの見返りを与える時期を誤らない(2)国際包囲網構築(3)米国の軍事力を背景とする恫喝と懐柔−の3つの方針を堅持し続けることで北朝鮮の対話を引き出してきた。こうした方針は北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動を見せるまで変わらないとみられる。

 首相は今月7日、米ワシントンでのトランプ氏との共同記者会見で、「過去の過ちを決して繰り返してはならない」と述べ、トランプ氏ともこの考えを共有することを強調した。対北制裁の国際包囲網堅持についても、日米が主導して今月上旬にカナダで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)で方針継続で賛同を得た。

 だが、トランプ氏の「新しいアプローチ」の一環である「トップダウン方式」には、首相は慎重姿勢を崩していない。日朝首脳会談は「拉致問題の解決に資することがなければならない」という立場を掲げる中で、首相と金正恩氏との直接交渉のタイミングをどう計るかが大きな課題となる。(田北真樹子)

2018.6.25 22:51
産経ニュース
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