鉄道運転再開までに長時間 課題浮き彫りに
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180625/k10011495131000.htm
大阪北部地震 鉄道運転再開までに長時間 課題浮き彫りに
2018年6月26日 17時14分大阪北部地震
朝の通勤・通学の時間帯に発生した大阪府北部の地震では、なぜ鉄道の運転再開に時間がかかり混乱が続いたのか。課題が浮き彫りになってきました。
このうち、JR西日本は大阪環状線など近畿エリアの22の路線で列車を緊急停止させ、駅と駅の間に150本以上が止まりました。
およそ14万人が最長で4時間にわたって列車から出られなくなったうえ、主な路線の運転再開は午後11時ごろまでずれ込み、240万人に影響が出ました。
JR西日本では、沿線など合わせて168か所に地震計を設置していて、観測した揺れによって区間ごとに点検方法を決めます。
揺れが基準より小さければ、乗客を乗せたまま、近くの駅まで低速で列車を移動させることもできます。
しかし、在来線では「計測震度」と呼ばれる小数第1位まで表す値が、震度5弱に相当する4.5以上の揺れを観測すると、その区間をすべて歩いて点検しなけれなりません。
今回の地震で在来線で点検が必要になった区間は、およそ900キロにおよびました。
点検より乗客の救出を優先し、実際に線路の点検が始まったのは地震発生からおよそ5時間後で、点検が始まっても道路の渋滞によって、作業員の現場への到着が遅れたということです。
さらに、運行本数の多い都市部では、多くの踏切が閉まったままの状態になり、さらに道路の渋滞に拍車をかける悪循環が生じていました。
国土交通省は列車からの乗客の救出や運転再開の在り方などについて検証を行い、対応の改善を図りたいとしています。
東日本大震災でも課題 進め対策
鉄道の運転再開にかかる時間をいかに短くするか。首都圏で500万人余りが帰宅困難となった7年前の東日本大震災でも課題が指摘され、首都圏の私鉄で対策が進められています。
対策の1つが、点検が必要な区間を絞り込むことです。東武鉄道は東日本大震災を受けて、沿線の地震計を11か所から17か所に増やしました。
東武鉄道では震度5弱以上を観測した範囲について、すべて線路を歩いて点検することにしていますが、その範囲を細かく絞り込み、点検にかかる時間を短くするのが狙いです。
東武鉄道軌道課の若松誠課長補佐は「以前は広い範囲を1つの地震計で観測していたので、地震の際、同じように広い範囲で列車を停止させてしまっていた。地震計を増やした結果、停止・点検の範囲も狭まり効率的になった」と話しています。
ドローン活用の鉄道会社も
災害が起きた際、被害の状況を迅速に把握しようと、小型の無人機=ドローンを活用する鉄道会社もあります。
「西武鉄道」では線路脇の土砂が崩れるなどして、人が近づけない場合、ドローンを使って上空から撮影することにしています。
グループの建設会社が、ふだん測量や空中撮影に使用している機材を活用します。
おととし8月に台風による大雨のため、線路脇ののり面が広範囲にわたって崩れた際には、ドローンの映像で被害の規模や、列車や線路との位置関係を素早く把握することができたということです。
西武鉄道広報部の曽根真紀主任は「事故や災害を想定した復旧訓練の中でも、状況把握のためドローンを飛ばす訓練を取り入れている。航空法の規制などもあるが、ドローンを含めたさまざまな手段を用いて、運行の早期再開に取り組んでいきたい」と話しています。